Challenge period
2023-09-05 - 2025-03-31
Final progress report
Thu, 10 Oct 2024 16:26:38 +0900
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Tue, 05 Sep 2023 10:00:00 +0900
お久しぶりです、待井です
最近、メンバーで読書会を始めました
選んだ本は「京大発 専門分野の越え方―対話から生まれる学際の探求」(1)です
今回は萩原広道先生の書かれた第3章「専門分野の底流にあるものとしての〈学際〉」の読み合わせをしたので、まとめと感想を紹介します。
3章では、従来の学際とは異なる新たな学際の形(〈学際〉と区別して表記)が提案されました。まずはその概要を要約します。
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一般に学際は専門分野が存在することを自明のこととして捉え、異なる知同士が相互作用し、さらには統合されていく過程として捉えられきた。
一方著者は、確固とした専門分野の存立に疑問を抱き、〈学際〉を「一見すると自立しているかのように振る舞う専門分野同士の、表面からは知覚されないもたれ合いの関係を顕在化する行為」と捉え直している。言い換えれば、〈学際〉は学問全体のネットワークの中で、個々の専門分野がどのように位置づけられるかを知る過程である。
〈学際〉は、内実を伴わない中途半端な形態に陥りやすい従来の学際に対し、普段知覚されない専門分野同士の関係性を表出させるという明確な目標を与えてくれる。
その実践によって、異分野の特質を適切に理解する能力が育まれること、また自己の専門分野を相対化することを通じて、自己の専門分野を特徴づけるうまい表現や指標、さらには専門分野の本質をが見出されることが期待できる。
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著者が提起した〈学際〉のあり方について、私たちが活動している中で実感している重要な視点が含まれていると考えています。
著者は〈学際〉の意義の一つとして、学問全体のネットワークを知ることをあげています。
私はこの点について特に自分自身の主観的な学問ネットワークの構築が重要であると考えました。
本文中にも述べられていますが、客観的な指標を用いた学問全体のネットワーク図は、例えば研究キーワードを元にしたSchola Scope(2) や、論文の引用関係を元にしたConnected Papers(3) など、様々な方法でまとめられています。
一方、私たちが研究する上でオリジナリティを担保してくれるのは、それぞれの研究者の主観的なものの見方です。すなわち自己の中にどれだけ広大な、あるいは深いネットワークを持っており、何かの現象に対峙した時にいかにしてそれと結びつけることができるかが研究者の独自性ではないでしょうか。
ここで提起された〈学際〉は、異分野同士の関係性を自分の中で構築していく過程に他なりません。異分野交流は、その過程において重要な活動であるといえます。
さらに、本文中には以下のような説明もありました。
〈学際〉の場は、自己の専門分野に対する捉え方を更新し、さらには「なぜ研究するのか」という問いをめぐり、自己の内面と対話する機会をも拓く。
私たちの異分野交流ワークショップでは「あなたの研究の成果」ではなく、「研究を通したあなた」の炙り出しを重視して、設計を行っています。特にワークショップの前に記入してもらうプロフィールでは、著者が述べているように「自己の内面と対話する機会」を作れるよう、意識して作っています。
一般に研究者は自分の研究について科学的に正しく説明することは得意だと思います。一方で、なぜ自分の研究が面白いのかを説明する際(例えばアウトリーチなど)には、まず自分は何を面白いと思うのかを理解する必要があります。自己との対話は、その機会を設ける上で重要です。
最後に、ここまで異分野交流はなぜ重要なのかを著者の説明と関連付けて説明してきましたが、結局私がなぜ異分野交流をするのかと聞かれれば、有無を言わずに楽しいからと答えます。楽しい上に、他の学問分野と自分の分野の関係性もよく知ることができる、自分自身の内面を深ぼることにもつながる、なんて異分野交流は何て素敵なんでしょうね。
それでは、また次回。
参考
1:https://www.nakanishiya.co.jp/book/b623204.html
2:https://navischola.app/network/6/general-science-and-engineering/
3:https://www.connectedpapers.com/