現在、エッセンシャルオイルの分析に加えて、緑茶の香り成分についても分析を行っています。そこで、今月はエッセンシャルオイルの分析とお茶の香り成分の分析結果の違いについてご紹介したいと思います。
これまで多くのエッセンシャルオイルを分析してきましたが、エッセンシャルオイルにはそのオイルに特徴的な成分(含有量の多い成分)が含まれていることが一般的です。例えばラベンダーなら酢酸リナリル、オレンジ油などの柑橘系ならリモネンなどです。
それに対して緑茶の場合、特徴的な成分を挙げるのが少し難しいです。緑茶についてあまり知らない頃、茶葉をn-ヘキサンなどの低極性溶媒で抽出し、そのエキスをGCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)で分析しました。そうしたら、カフェイン由来のピークは強く観測されましたが、他に特徴的なピークはほとんど検出されませんでした。
有機溶媒で成分を抽出する方法では、緑茶の香り成分を分析できないことが分かりましたので、論文を調べて別の方法を検討することにしました。それはお茶を加温し、香り成分を気化させ、一度吸着剤に香り成分を吸着させたあと、その吸着剤に吸着した成分を有機溶剤で抽出して分析するというものです。
この方法で分析するとかなり多くの成分(ピーク)を検出することができました。ただ、エッセンシャルオイルのように特徴的な成分というものはなく、かなり多くの成分が少しずつ含まれているというものでした。これがエッセンシャルオイルとは決定的に異なるところだと感じました。
緑茶には主要成分と言えるものがないので、緑茶の香りを合成香料だけで再現しようとするのはかなり難しいなと思いました。コーヒーも緑茶と同じように多くの成分が含まれていることが知られています。エッセンシャルオイルでも、サンダルウッドは多くの成分が少しずつ含まれている印象です。
エッセンシャルオイルを含め、緑茶であったり、コーヒーであったり、それぞれを代表する特徴的な香り成分を調べて、化学合成したその成分で香りを模倣しようと試みますが、天然由来物質であるエッセンシャルオイルなどの香りは主要成分の他、微量に含まれている成分によっても形成されているため、それを完全に化学合成化合物で作り出すことはかなり困難だと改めて感じた実験でした。これが天然香料の奥深さであり、魅力であると思います。