突然ですが、ちょっとした供養ネタです。
数値推定課題(近似値クイズのような)においては、「推定値が、事前に呈示された数値に引っ張られやすい」という「アンカリング効果」が知られています
例: https://www.dropbox.com/scl/fi/4xpuym2oak0w44rx107fn/.png?rlkey=9udetg7phb6wxbh2lv92afxym&st=402a4qk7&dl=0
そして僕ら(筆頭著者は僕の先生)は以前、
よりよい集団意思決定(集合知)の実現に向けて、このアンカリング効果を活用できる可能性を検証しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0010027724000441?via%3Dihub
関連記事: https://academist-cf.com/fanclubs/300/progresses/3530?lang=ja#documentBody
数値推定課題で、
・ある人には事前に小さい値(低アンカー)を呈示してから→推定させる
・別の人には事前に大きい値(高アンカー)を呈示してから→推定させる
ということを行い、
その後、彼らの推定値を平均化することで、(お互いのバイアスを打ち消し合う形で)精度の高い推定が生み出されやすい というものです。
実際に僕らの研究では、実世界の出来事の予測(実験で使った題材は「数か月後の新型コロナ感染者数の予測」)にも一定程度有効なことが示されています。
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さて、
このほど、「DreamMatch!! 2024」というクイズ大会のエントリーが始まりました(5月18日でエントリー〆切)。
同大会では、エントリーの優先権が、3問の「近似値クイズ」で競われることになっていました。
https://dmquiz.jimdofree.com/エントリー/
そのうちの1問に、次のような問題がありました:
2024年5月19日(日)に行われる『麻雀最強戦2024 Mリーグスペシャルマッチ』の決勝卓トップの点数
僕は、麻雀を全く知りません。
当然ながら、点数の相場なんて一切分かりません。
しかし、ふと考えました。
この「DreamMatch!! 2024」は、実は「2人1チーム」で参加するというコンセプトです。
そして近似値クイズはいわば「数値推定課題」、さらに今回の場合は「実世界の出来事の予測」です。
これ、もしかしたら、僕らの研究の知見を試せるのでは…?
つまり、
2人のうち、一方に低アンカーを、他方に高アンカーを呈示したうえで推定をしてもらい、その推定値を平均化する
こうすれば、麻雀を一切知らない僕でもそれなりの回答を出せるのでは…?
そう考えました。
https://www.dropbox.com/scl/fi/31kvewsymqvjiomzp8qdc/anchoringWoCrev.jpg?rlkey=k5ahgn753wsfe9wnmtehdmh9h&st=e21mzmjc&dl=0
そこで、ちょっと試してみました。
「麻雀はちょっとだけ知っているがMリーグは観たことがない」という知人に聞いてみたところ(この近似値クイズについては伝えていません)、
「点数が4桁や6桁になることはまずないだろう」
とのことでした。
これを受けて、低アンカーを「5000」、高アンカーを「100000」に設定しました。
そして、「DreamMatch!! 2024」には参加しないという別の2人の知人に、この近似値クイズを出してみました(実施日: 2024年5月18日)。
結果として、2人の回答はそれぞれ「32000」、「75000」となり、
その平均値は【53500】となりました。
そして、気になる正答は、なんと【51000】
誤差は【+2500】
我ながら、そこそこ悪くないような気がしました。
もちろん、もっと麻雀に詳しい人から情報を集めたり、もっと色々と考えたりすれば、よりよい回答は出せたと思います。
しかし、麻雀を全く知らない身であっても、「アンカーを呈示する」という簡単なやり方で(回答者には「調べたり深く考えたりせずにご回答ください」としか伝えていません)、そこそこよい回答を導くことができたというのは、1つ興味深いところかなと我ながら思いました。
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しかし、注意すべきというか、今回改めて感じたこともあります。
それは、「適切なアンカー値」の重要性です。
実は、近似値3問のうち、残りの2問についても同様に行ってみたのですが、高アンカーをちょっと高すぎる値に設定してしまったせいか、
2人の回答の平均値をとっても、かなり誤差が大きくなってしまいました(具体的な値は伏せます)。
さらに、上記の麻雀の点数であっても、一応、「4桁や6桁になることはない」という程度の事前知識は仕入れたわけです。
「アンカリング効果を応用した集合知の実現」のためには、ある程度妥当なアンカー値を設定することが重要だということに、改めて気づかされました。
ともあれ、本手法は非常に簡単な手法であり、知識や時間が少ない中でも応用しやすいという点では利点があるかな、とも感じました
(個人的には、僕らの研究の知見の有用性を試せたという意味で、少し嬉しかったです)
今後、abc/EQIDENやDreamMatchのエントリーの際に本手法をお使いになるかどうかは、皆様のご判断にお任せします
※ いかなる結果になっても、我々は責任を負いません(負えません)
以上、ちょっとした供養ネタでした。
## きょうのもんだい ######
Q. 東京都東村山市や茨城県水戸市などでは「市の鳥」に指定されている、地面にいる虫を見つけるためにトコトコ歩きをする性質を持った、長い尾と白い腹部が特徴の鳥は何でしょう
A. ハクセキレイ
【ひとこと】この「DreamMatch!!」という大会、実は僕も、2012年の大会に、高校の後輩と一緒に参加しました。そのときのチーム名が「追憶のハクセキレイ」でした。追憶のroulette!。
後輩は活躍してくれたのですが、僕は1問しか正答できませんでした ごめん(「有栖川有栖の出身大学」というフリで「同志社大学」を答えました)。
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