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Masaru SHIRASUNA

追手門学院大学、Specially-appointed Assistant Professor

Challenge period

2023-05-22 - 2024-08-30

Final progress report

Fri, 30 Aug 2024 19:29:49 +0900

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Mon, 22 May 2023 10:00:00 +0900

あまり知られていない(と思われる)こと

こんなことを考えるのは僕だけかもしれませんが、「学術界」と「クイズ界」は似ているなぁ、と思うことがあります。

キーワードは「ボランティア」です。

「前提」を共有したくて、僭越ながら書きました。
長文で恐縮ですが、研究者の方も、クイズ関係者の方も、そのどちらでもない方も、多くの方々に読んでいただければ幸甚です。


## 主に研究者の方(&一般の方)へ ##

クイズ(特に早押しクイズ)の世界には、いわゆる「統括団体」がありません。

いまでこそ「日本クイズ協会」という団体はございますが、https://quiz.or.jp/
それでも、(通常のスポーツなどで存在するような)統一ルールを定めるような機構・連盟は存在しません。
しかし今は、数多くの大会が全国各地で開かれています
(参考) https://quiz-schedule.info/
(実際のクイズ大会は、例えばこのような形です) https://abc-dive.com/portal/index.php/record/movie

では、これらの大会はどのように運営されているのかというと、実は、ほぼすべて「ボランティア」です。
学生・社会人の有志による、「こんな大会を開きたい!」「こんなコンセプトで楽しみたい!」といった愛や熱意。それがほぼすべての原動力です。
参加者が十数名の小規模大会も、全国各地から1000名近くの参加者が集まる大規模大会も、それは同じです。ルールも大会(企画者)によって異なります。

一般的なケースとして、
・ボランティアによる運営であるため、参加費は数百~数千円と、他のライブイベントなどと比べると破格の安さです。
・また大抵の場合、優勝しても「賞金」は出ません。
・そして、運営側は薄利です(参加費のみでは赤字で、大会後に「大会記録集」を頒布し、それでようやく黒字になるかならないかというレベル)。

それでも、多くの方は(本業のかたわら)「自分たちのクイズで楽しんでもらいたい!」という思いで大会を運営し、「クイズ界」を作ってきました。
ボランティア体制でありながらクイズがこれほどの一大文化となったのは、注目に値すると思っています。


以上のような仕組みは、学会の運営、ひいては学問領域の維持・発展にも通じると思いませんか?

学会の運営も、多くは「ボランティア」かと思います。
研究業務・大学業務のかたわら、大会委員を募り、いわば「有志」で学会の全国大会を企画・運営・実施しています。

(年次大会の場合はやや「義務感」もあるかもしれないですが) 学会内の企画セッションや、個別の研究会などはなおさらです。「こういうテーマを打ち出したい!」「学問の発展に貢献したい!」という熱意があって、初めて成立します。
逆に言えば、そのような熱意を持つ人がいなくなってしまえば、学問全体が衰退してしまいかねません。

クイズの世界でも、回答者、観戦者、それに運営者(企画者)の存在が必要です。言い換えれば、この三者が絶えず揃っていなければ、せっかく築かれた「クイズ」という競技・文化も、一過性のものに終わってしまうかもしれません。
クイズは、単なる「知識を引き出す」だけの作業ではありません。やって楽しむ娯楽であり、他の人と競い合う競技(スポーツ)でもあります。また、知識をつけたり興味関心を引き出したりする教育的側面も持っています。
「これは何?」と問うことで外界と関わり、知識を得ていく。そのような、おそらく人特有の営みが廃れてしまうのは、非常に寂しいことだと僕は思います。



また、「ボランティア」とは少し逸れますが、誤解されがちなことも付記します。
それは、クイズでは「むやみやたらな引っかけ問題」は出されない、ということです。

クイズは、実は「正答が出る」ように作られています。正答が出なければ、勝抜け者も現れず、大会は進みません(そのうえ、回答者・観戦者とも面白くありません)。そのため、作問の時点で、「この問題文から想定解を引き出せるか」も考慮されます。問題文の途中に紛らわしい表現があったり、正答を一意に定め切れなかったりすれば、修正または削除が要求されます(そのくらい、実は1問1問は厳密に作られています)。

問題文の前後で問いが変わる、いわゆる「~ですが」問題(クイズ界では「パラレル問題」と呼ばれます)は、確かに出題されます。しかしパラレル問題も、前半部分でその先を予測可能な問題文が鉄則です(そうでなければ、出題する問題も「なんでもあり」になってしまいます)。例えば、

・「日本で一番高い山は富士山ですが、二番目に高い山は何?」
という問題(「一番目→二番目」のみが変化)は想定されますが、
・「日本で一番高い山は富士山ですが、世界で46番目に人口が多い都市はどこ?」
といった問題(前半と後半に全く関連がない)はご法度とされます。

一般的には、「むやみやたらなひっかけは出さない・出されない」という信頼関係の下で、クイズは成り立っています
(ただし、「ひっかけ問題を楽しむ」のをコンセプトに、ひっかけ問題が多く出題される、つまり「ひっかけがある」ことに対しての信頼関係が存在するようなケースもあります)。
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## 主にクイズ関係者の方(&一般の方)へ ##

学術雑誌に論文を発表する。その積み重ねで、学問は発展していきます。

その根幹をなす論文の審査(=査読)は、実はほぼ「ボランティア」です。

査読を専門に行う人がいるわけではなく、たとえ謝金が出たとしても本当にごく少額です。
さらに、論文の編集者(最終的に採否を決める人)や学術誌の編集委員も、多くは大学の教員や企業の研究員などの集まりです。

また、論文を書く側に関しても、「論文をたくさん発表しているなら、印税もたくさんもらっているんでしょ?」と言われることもあります。

実は、全く逆です。
印税の類は一銭も入りません。むしろ、「掲載料」という大金を支払います(国際誌では日本円で20~50万程度、著名雑誌であればそれ以上のケースも)。

一銭も儲からないのに、どうして膨大な時間と労力を割いてまで、1本の論文を書き上げるのか。
それはひとえに、「自分の研究を世に出したい!」「学術の発展に貢献したい!」という愛と熱意によるものです。


この構造、クイズ界の何かに似ていると思いませんか?
クイズの大会です。

クイズ大会の場合、出題する問題を持ち寄って、それに不備がないかどうかを事前にスタッフ内でチェックします(大抵はボランティア)。クイズの世界では、個々人は、クイズに答える「回答者」だけでなく、他人の問題をチェックする「審査者」も経験することになるはずです。

研究論文も同様です。基本的には自分たちが論文を書きますが、時には他人の論文もチェックします
(科研費のような研究資金の獲得においても、同様に「書く側」と「見る側」の両方を経験します)。

クイズをチェックするには、一定程度にクイズの知識と経験が必要です(知識と経験の両方を持っていた方が、より洗練された問題が作れるという面もあります)。
学術論文をチェックするのも、当該分野における専門性が要求されるため、必然的に研究者同士で行うことになる。そう考えていただければよいかと思います。


また、1つの大会を開くには、作問・問題選定以外にも、企画立案、人員確保、作問、会場確保…、など、かなりの時間と労力が必要になるはずです。
しかし大会を開いたからといって、別に儲かるわけではありません(少なくとも、それで生計を立てる人はいません)。多くは、「自分たちのクイズをみんなに解いてもらいたい!」というモチベーションがすべてだと思います。

学術界の学会や研究会も、ほぼ同様です。学会の企画・開催を生業とする人は存在しません。
大学の教員や企業の研究員などが、自分たちで研究を行い、自分たちで研究を審査し、さらに自分たちで発表・交流の場を設けています。オフィシャルな学術会議であれば「学会員の業務の一環だから」という側面もあるかもしれないですが、それでもほぼ「ボランティア」の体制です。

1つのクイズ・1つの大会の裏で多くの人が携わっている(携わる必要がある)という構造は、1つの研究・1つの学問分野を回していくうえでも同じだと、僕は感じています。
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学術とクイズ。
ひとことで言えば、どちらも「自給自足」だと僕は思っています。

もちろん、クイズと研究は全く別物であり、「一緒にするな!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、両者とも「ボランティア」的体制で回っており、(運営にしろ参加にしろ)何かしらの形で携わる人が常に必要であることは、知っていただければ幸いです。


みんなが作(創)り、みんなが評価し、みんなが楽しむ。そうやって回っていく。世代が受け継がれていく。
そのためには、一緒に作る人、協力してくれる人、理解してくれる人、…そのような「仲間集め」が必要なはずです。それは、多くの方々が日々痛感されていることと存じます。

この「クイズ×認知科学」プロジェクトでも、そのような「仲間」を増やしたい。そう常々考える次第です。
「人の知性(human intelligene) の探求」というのが僕の一番の興味ですが、
・学術的観点でいえば、「認知科学/心理学とクイズとの融合」という新たな学術体系の構築につながるかもしれません(本プロジェクトの「共同研究者」や「後継者」も歓迎します)。
・またクイズ的観点でいえば、「学術データの蓄積」という立場からクイズ界を一層盛り上げられるかもしれません。

この旅路、一緒に歩いてみませんか (五七五)


—-- 参考 —---
市川尚志(2020). クイズというユートピア: アマチュアクイズ大会文化 ユリイカ2020年7月号「特集 クイズの世界」, No. 52, 121-129.
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## きょうのもんだい ######

Q. かつて栄えた王朝で、スコータイ朝やアユタヤ朝といえば、現在のどこの国にあったものでしょう
A. タイ

【ひとこと】現在のタイには「ブラパ大学」という大学があります。そのブラパ大学の教員と学生が、僕の所属する追手門学院大学(の人工知能・認知科学専攻)に訪問に来ました。本学同専攻のとある先生が、ブラパ大学の先生と交流があるそうで、「お互いの学生同士、研究を通して交流しましょう」といったプログラムに参画しています。この一環で、僕らも先日、研究室紹介を行いました(といっても、僕はサブ役で実験プログラムを回しただけでしたが)。このときは、研究室で現在取り組んでいる「ブースト(人の認知的技量をうまく引き出すための介入策)」の研究を紹介しました
(参考) https://osf.io/preprints/psyarxiv/fd8u9


Q. ラテン語で「イノブタ」を意味する「ヒュブリダ」が語源である、こんにちでは「2つの要素をかけあわせたもの」を表現する際に使われる言葉は何でしょう
A. ハイブリッド

【ひとこと】「ハイブリッド」といえば、数年前までは「車」(ハイブリッドカー)のイメージが強かったですが、コロナ禍以降では「イベントを、オンラインと対面の双方で開催する」という形(ハイブリッド開催)で耳にすることが多くなりました。語源は、実は「豚とイノシシから生まれた生物(=イノブタ)」です。
明日12/27のアカデミストのイベントも、「ハイブリッド開催」ですね。僕はオンライン発表ですが(所用により現地には行けず…実はアカデミスト関係者の大半はいまだ対面でお会いしたことがないです)、オンラインの方も現地の方も、どうぞよろしくお願いいたします!
https://cic-academist1227.peatix.com/

白砂大 Tue, 26 Dec 2023 17:00:21 +0900
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