Closed Bring life-long robotic partners to realization for the elderly!

【研究進捗報告】論文発表と書籍出版について

あっという間に年度末と年度始まりが過ぎてしまいました．
この期間は，大量の事務手続きをうまくこなしながら研究活動も続けてきました．

本日まず初めにご報告したいことは，情報処理学会論文誌に我々の研究グループで取り組んだ研究内容が掲載されたことについてです．
昨年7月に学会より推薦をいただいて論文を投稿してから，4月にようやく掲載が決定しました．
書誌情報はこちらです．
情報処理学会論文誌Vol.63 No.4 1115-1127 “高齢者見守りのためのカウンセリングエージェントとの対話過程におけるQuality of Life推定システムの構築”
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=217721&item_no=1&page_id=13&block_id=8

ご協力，ご支援してくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです．
この論文の内容について簡単に説明しますと，高齢者福祉の分野では，高齢者のQOL向上が重要とされながらも，その測定方法の非効率性が問題視されてきました．そこで，対話エージェントと会話をする中で，その人の表情や視線パターン，頭部揺動からQOLを推定するシステムを提案し，その有効性を示しました．しかし，人の状態を正しく推定できただけでは，人とロボットの関係を継続させることができないという，ヒューマンロボットインタラクションの分野における大きな課題を解決することができません．その糸口を探すために，我々は，ロボットが人の自己開示（自分の内面について話すこと）を促すような場を作る必要があると考えました．ロボットにどのような発言をさせることで人の自己開示が促されるか調べるため，エージェントによるカウンセリング実験を実施し，参加者が自己開示できた度合いと他の評価指標との関係を調べました．その結果，エージェントに共感されていると感じる人ほど自己開示しやすいということが分かり，エージェントの発言の共感性を高めることが人の自己開示を促す可能性が示唆されました．また，自己開示度を向上させることで状態推定に必要なデータを集めやすくなり，QOL推定精度を向上させられる可能性も示しました．この研究が，少しでも高齢者福祉のICT化における問題の解決に貢献できればと考えます．

二つ目は，自分も少し校正に携わった書籍が出版されたことです．書籍のタイトルは“知能の誕生”（デヨル・リー （著）,阿部 央 （訳）,加藤 淳子 （監修））です．
これは，多面的に学問分野を横断しながら知能について考察した書籍で，文系理系関係なく理解しやすい内容となっています．
自分は内容の確認をしただけなので大した仕事はしていないのですが，名前を本の最後の部分に掲載していただきました．自分と同じ研究棟にいらっしゃる同姓同名の先生のお名前が掲載された書籍は多くあるのですが，正真正銘自分の氏名が書籍に載ったのは初めての経験なので，とても嬉しく思います．いつかは自分で自分の研究や考えを本にして出版し，さらに多くの人に発信できればと思います．そのためにも，今は研究活動と，そのための勉学に努め，「高齢者福祉やQOLと言ったら中川だ」と言われるように，知識補強に努めてまいりたいと思います．
今後ともよろしくお願いいたします．

写真は散歩で訪れた葛西臨海公園の観覧車です．