北河 憲雄
私の専門は肉眼解剖学です。
人体は一人として同じ構造をしていません。血管や神経の走行も毎回異なり、解剖のたびに新しい発見があります。私はその奥深さに魅せられ、この分野を生涯のテーマとしました。人体は壮大で、すべてを表現することは偉大な先人たちを持ってしても不可能でした。そのため、各時代の医療・社会の求めに応え、解析・提示をしていくことが肉眼解剖学者には求められています。
私はこの大切な学問に従事する機会をくださったご献体者、ご遺族の皆様に深く感謝をしながら、解剖学の知見で医療の質と安全を向上させることを目指しています。
解剖学は、英語学習におけるアルファベットにたとえられます。解剖学によって人体構造を理解することは、文献理解、医療者同士の会話に必須だからです。また、人体の「解剖学的リスク」も解剖学の重要な要素です。
たとえば、上の奥歯の根っこは「上顎洞」という空間に近接しています。この構造を理解していないと、抜歯時に上顎洞の壁に孔を開ける危険性があります。こうした人体の構造が原因で起こりうる合併症などの可能性を「解剖学的リスク」といいます。
このような知識は医療現場において理解済みが前提とされているにもかかわらず、実際の解剖学教育課程では十分に習得できず、医療者は個々で理解を深めているのが現状です。医療者間でも経験症例や専門分野の違いもあるため、エビデンスに基づいた解剖学的リスクの共通認識はありません。
そこで私は本研究により、解剖学的リスクを整理・体系化することで医療現場での知識ギャップを解消し、より良い医療環境につなげることを目指しています。
本研究では、3段階のアプローチで解剖学的リスクの体系化を目指します。
第1段階では、解剖学的リスクの集約と整理を行います。教科書・学術論文・臨床ガイドラインからリスクを抽出し、専門用語の違いや曖昧な定義を洗い出します。
第2段階では、専門の異なる医療者や解剖学者と議論を重ね、内容をブラッシュアップします。診療科によって重視する構造やリスクの認識が異なるため、さまざまな分野の専門家と意見交換を行い、より実践的で汎用性の高い知見に磨き上げます。
第3段階では、再度別の専門家グループによって検証と再体系化を行います。異なる立場からの意見を反映することで、偏りのない信頼性の高い体系を構築します。
このプロセスでは、「どう伝えるか」にも重点を置きます。人体構造に関する理解は、学生・研修医・専門医・一般社会など、対象によって求められる深度や表現が異なります。
そこで、本研究ではそれぞれの立場に応じた伝え方や教育方法も検討し、解剖学の知見をよりわかりやすく共有できる形に整えていきます。
また、私たちはこの取り組みを「解剖学的リスクコミュニケーション」として位置づけています。説得を目的とする一方的な情報伝達ではなく、対話を通じて共通の解剖学的リスクの認識や信頼関係を築き、より良い意志決定や診療時のリスクの軽減を実現しようとしています。
私が歯科医師であるため、今回は歯科領域を対象とし、口腔顎顔面頸部に関係した200-300語の解剖学的リスクのリスト化と、そのリストを各診療科の医療者と解剖学者とでブラッシュアップをするところまでを目指します。
解剖学的リスクは、文献などの根拠資料とともに解剖、各診療科の書籍・文献から抽出します。複数の名称の存在、専門分野による用語定義の違いも、今後のブラッシュアップにおいて極めて重要な情報となるため、この時点でしっかりと記録します。抽出後、分類・整理して体系化します。
ブラッシュアップでは、リスクの正当性・重要性及びリスクを伝えるべき対象 (学生・研修医・一般社会etc...) について、歯科の複数の診療科の専門家と解剖学者で話し合います。
同じ診療科、たとえば口腔外科医同士でもよく対応する症例、詳しい領域が違うため、ブラッシュアップ時に適時新たな共同研究者を追加します。
本研究の成果は、学術的な検証を経るべく、国際的な専門誌へ英文論文として投稿し、公開します。またこの成果をもとに、将来的には他の領域にも展開し、医療全体で共有できる解剖学的リスクの共通基盤の構築を目指します。
本研究の最終目的は、解剖学的リスクコミュニケーションを踏まえた教育・研究が一般的となる社会です。そのためには研究の推進と同時に、解剖学的リスクの概念と本プロジェクトが広く認知され、多くの賛同者を得ることが必要です。
そのため、このクラウドファンディングを通して、幅広い方のご意見をうかがいながら、応援してくれる方、一緒に推進していただける方を増やしていきたいと考えています。
ご支援は研究活動に必要な経費、用語の定義・背景を調べるための書籍の購入費・文献複写費、英文校正費、そして本研究ではフットワークを軽くして、幅広い専門家の意見を集約することが不可欠ですが、そのための学会・スタディーグループに参加するための費用に大切に使用します。
本プロジェクトの意義をお伝えすると、多くの方にご理解いただける一方で、その実現の難しさを案じていただくことも多いです。たしかに、医療者ごとの見解の相違、および書籍の記載の多様性は、大きな課題となります。しかし私は、多くの医療者との解剖学研究経験と、既存用語の名称体系に関する研究の知見を結集させ、この難題を克服できると確信しています。
医療者同士が「解剖学的リスク」を共通認識として共有できる基盤をつくること。それは、教育の質を高め、患者さんの安全を守る医療現場の礎となると信じています。
どうか、この挑戦を応援してください。
歴史を紐解けば、もともと医療者と解剖学者は一体であり、その知識は互いに密接に結びついていました。北河さんの挑戦は、そんな本来の繋がりを現代に取り戻す試みです。「解剖学的リスク」という新しい概念を丁寧に定義し、それをどう伝えるかという「リスクのコミュニケーション」という現実的なゴールを設定することで、高度化した医療現場のニーズと、深い解剖学的理解とを、もう一度しっかりと結び直そうとしています。この挑戦が、医療と解剖学の間に新しい風を吹き込み、専門分野を越えた対話の場を育てていくことを心から期待しています。応援しています!
効くはずの薬が自分にはあまり効かない、治るはずの治療をしてもらったのに思ったように治らない・・・皆様はそういった経験はないでしょうか?北河先生の研究はそういった個人差を解消するきっかけになると私は強く信じています。北河先生は非常に勤勉で熱心な先生です。この素晴らしい研究に皆様どうかお力添えいただけないでしょうか?
「解剖学的リスクコミュニケーション」という新しい考え方を伺い、私の臨床経験も踏まえて深く共感いたしました。医療従事者の間では、経験に基づく知識や暗黙の了解が多く存在しますが、経験豊富な方と新人ではリスクの認知や心構えに大きな差があります。患者さんに対する治療リスクの説明においても、必要な情報を正確かつわかりやすく伝えるためには、医療従事者間の共通理解が不可欠です。本研究は歯科分野にとどまらず、リハビリテーションを含む多くの医療領域に応用可能な大きな可能性を秘めており、非常に期待しております。
解剖学は,医学・歯学・獣医学系学部において体の構造を追究する基盤的学問ですが、医師や専門家の臨床現場での実践的な知識との間に存在するギャップが課題でした。「解剖学的リスクコミュニケーション」は、基礎-臨床間の情報共有とフィードバックにより、臨床手技における潜在的な危険性を体系化する新たな教育システムです。これは、近年高度化・複雑化する医療現場において事故や過誤防止のための医療リスクマネジメント向上に大きく寄与すると考え、今回推薦させて頂きます。
| Date | Plans |
|---|---|
2025年10月 |
解剖学的リスクの集約 |
2025年12月~2026年1月 |
解剖学的リスクのリスト作成 |
2026年2月~4月 |
解剖学的リスクのブラッシュアップ |
2026年5月 |
論文執筆開始 |
メールでお礼のメッセージをお送りします。
このリターン実施は2026年1月を予定しています。
お礼のメッセージ
| return | scheduled date |
|---|---|
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
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academist Journalに寄稿する研究報告レポートにお名前を掲載します。
このリターン実施は2026年11月を予定しています。
研究報告レポートにお名前掲載 / お礼のメッセージ
| return | scheduled date |
|---|---|
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
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本プロジェクトに関するオンラインサイエンスカフェにご招待します。
このリターン実施は2026年8月を予定しています。
オンラインサイエンスカフェ / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載
| return | scheduled date |
|---|---|
| オンラインサイエンスカフェ | August, 2026 |
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
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今回の研究が論文化した際に、謝辞を掲載いたします。
このリターン実施は2028年ごろを予定しています。
論文謝辞にお名前掲載 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ
| return | scheduled date |
|---|---|
| 論文謝辞にお名前掲載 | December, 2028 |
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
| オンラインサイエンスカフェ | August, 2026 |
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本研究の学会発表でお名前を掲載します。
このリターン実施は2026年11月〜2027年3月を予定しています。
学会発表でお名前掲載 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載
| return | scheduled date |
|---|---|
| 学会発表でお名前掲載 | March, 2027 |
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
| オンラインサイエンスカフェ | August, 2026 |
| 論文謝辞にお名前掲載 | December, 2028 |
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本研究について個別にディスカッションする機会を設けます。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
個別ディスカッション / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表でお名前掲載
| return | scheduled date |
|---|---|
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
| オンラインサイエンスカフェ | August, 2026 |
| 論文謝辞にお名前掲載 | December, 2028 |
| 学会発表でお名前掲載 | March, 2027 |
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本研究に関する出張講義を行います。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
※宿泊費・交通費は別途いただきます。
出張講義 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表でお名前掲載 / 個別ディスカッション
| return | scheduled date |
|---|---|
| お礼のメッセージ | January, 2026 |
| 研究報告レポートにお名前掲載 | November, 2026 |
| オンラインサイエンスカフェ | August, 2026 |
| 論文謝辞にお名前掲載 | December, 2028 |
| 学会発表でお名前掲載 | March, 2027 |
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