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湯沢 哲至
Tokyo University of Agriculture and Technology、学部4年
Pledged: 92,545 JPY
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Profile

湯沢 哲至

はじめまして、東京農工大学工学部生命工学科4年の湯沢哲至です。私は医薬品合成に利用できる酵素を対象に、データサイエンスを用いた融合研究を進めています。薬への関心を深めるきっかけとなったのは、精神疾患を抱えた知人が治療薬の服用で見事に回復していく様子を目の当たりにし、「薬には人の人生を大きく変える力がある」と強く感じたことでした。限られた資源を有効活用しながら必要な化合物を届けられる社会を築くため、本プロジェクトを立ち上げています。2022年末にVavricka先生が設立した新しい研究室で、少人数ながらもメンバー全員が多角的な議論を重ね、AI駆動型酵素の開発に精力的に取り組んでいます。

あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

私が研究を通じて実現したいのは、「どんな化合物でも合成可能な科学技術」を確立し、持続可能な社会づくりに大きく貢献することです。とりわけ医薬品は、開発に成功すれば多くの人を同時に救う力を持ちながら、その供給が不安定になりやすいという課題があります。需要に対して原材料の供給が追いつかず製造中止となってしまう医薬品も少なくありません。

私は、そうした問題を解消し、将来にわたって薬が必要な人に十分な量を届けられる体制を築きたいと考えています。従来の化学合成技術は優れた部分も多い一方で、限られた資源に依存しがちであったり、合成が難しい化合物が存在するなど、いまだ大きな課題を抱えています。だからこそ、限られた資源を効率的に利用できる新しい合成手法を確立し、医薬品や工業材料、機能性化合物の安定供給につなげたいと考えています。

どのようなアプローチで実現しようとしていますか?

私が注目しているアプローチは、微生物由来の酵素を活用したバイオ生産技術です。酵素は、温和な条件で化学反応を進められるうえ、遺伝子工学によって特定の機能を強化することが可能です。従来の化学プロセスとは異なり、高温高圧や有機溶媒を大量に用いずに済むことが多いため、環境負荷を抑えながら幅広い化合物の合成に挑戦できます。

なかでも「シトクロムP450(P450)」と呼ばれる酵素群は、酸化反応をはじめとした多彩な化学変換を触媒する性質を持ち、医薬品合成や環境修復などの分野で期待が高まっています。しかし、P450はアミノ酸配列のわずかな変化で活性や基質特異性が大きく変わるため、そのポテンシャルを最大限に活用するには膨大な試行錯誤が必要でした。

そこで私は、機械学習や大規模データの解析を組み合わせることで、配列と機能の関係を効率よく探索し、有望な変異の組み合わせを予測する手法を取り入れています。実験とシミュレーション結果をモデルにフィードバックしながら繰り返すことで、従来の化学合成では困難だった領域にもアプローチできると考えています。最終的には、このバイオ生産技術の確立によって、資源を大切に使いながら新たな化合物を作り出す産業プロセスを築き上げたいと思っています。

今回のプロジェクトで行う研究テーマはなんですか?

本プロジェクトの中心的なテーマは、「非天然の反応を触媒できる酵素をAIで探索する」ことです。自然界に存在する化合物を合成する酵素は、長い進化の過程を経て既に一定数存在しますが、人間が新たに設計した医薬品候補や機能性分子など、いわゆる非天然化合物をターゲットにした酵素はほとんど見つかりません。

そこで、非天然化合物を効率よく合成できるようにP450を進化させることで、これまでの化学手法では高いコストや大きな環境負荷が懸念された領域を切り開いていきます。具体的には、大規模データセットを活用した機械学習モデルを構築し、配列変異の設計や予測、そして実験的検証を繰り返すことで、最適な反応特性を持つP450変異体を得るプロセスを確立していきます。

私は、この研究を通じて従来の合成手法では諦めていた化合物にもアクセス可能な世界を生み出し、多様な産業分野におけるイノベーションの土台を築きたいと考えています。将来的には、酵素の触媒機能をさらに理解し、それを模倣したナノ触媒の開発にも展開することで、持続可能な社会の実現に寄与したいと思っています。

Why we need your support

AIによる酵素工学は、今後の産業と医薬品生産の在り方を大きく変革する可能性を秘めた新領域ですが、まだ研究が始まったばかりであり、設備投資や遺伝子配列の取得、検証実験に必要な試薬の購入には少なくない費用がかかります。私が所属する研究室は2022年末にVavricka先生が設立したばかりで、メンバーは少人数ながらも高い志を持って日々議論を重ね、プロジェクトを精力的に進めています。

皆さまにいただいたご支援は、こうした研究活動を加速するための資金として大切に使わせていただきたいと考えています。具体的には、有望な遺伝子配列の購入や学会発表のための渡航費用、実験設備の充実などに充当し、研究成果を確固たるものにしていく予定です。

私のゴールは、将来にわたって薬を必要とする人々が困ることなく治療を受けられる社会を築くことです。限られた資源を賢く活用しながら、薬を含むさまざまな化合物を必要なだけ生産できる仕組みをつくるため、どうか皆さまのご支援とご協力をお願いいたします。このプロジェクトを通じて、私たちはサステナブルな社会を目指す多くの方々と情報やアイデアを交換し、新たな知見を取り入れつつ未来を切り拓いていきたいと思っています。

Recommender's comment

Vavricka, Christopher J
東京農工大学 工学研究院 生命機能科学部門 准教授

私たちは、環境を汚染することなく化学物質、医薬品、その他の材料を生産するためのより良い技術を緊急に必要としています。生物工学は、低炭素フットプリントで、有害な化学プロセスを使用せずに、必要な目標材料を生産するための優れた解決策を提供します。しかし、新しい化学物質、特に医薬品を生物学的に生産するためには、必要な化学変換を触媒する新しい酵素を発見し、設計することが不可欠です。

酵素の発見と設計のプロセスを加速するために、湯沢さんは、酵素構造情報から直接酵素活性を予測できる初のグラフニューラルネットワーク(GNN)を開発しました。彼のモデルをタンパク質の構造情報でトレーニングできる能力は、酵素予測における重要な前進であり、分子構造が分子機能の基盤であることを直接反映しています。このプロジェクトは、環境に負担をかけることなく貴重な材料を生産できる新しい酵素を発見し、設計する大きな可能性を秘めています。

池袋一典
東京農工大学 工学研究院 生命機能科学部門 教授

酵素は常温常圧で化学反応を100万倍以上加速する、という素晴らしい触媒で、人類は数千年の昔から、お酒や発酵食品の製造等に利用してきました。しかし、使える酵素の種類に限りがあり、こういう機能を持つ新しい酵素が欲しい、という要望は、世界中の科学者や技術者が持っています。
 湯沢君の提案は、そういう新しい酵素を、AIを利用して設計・探索することを目指しており、柔軟な発想力で、まだ誰も思いついていない画期的な手法を作り出してくれると思います。

清田洋正
岡山大学 環境生命科学学域 教授

酵素反応は、医薬・農薬を製造するクリーンかつ効率的な手段として期待されていますが、天然の酵素(鍵穴)は特定の化合物(鍵)としか反応しないため、化学合成に較べて自由度が無いのが難点でした。AIを活用し、必要に応じて「任意の化合物に適応した酵素を創製する」だけでなく「任意の化学反応を再現する酵素(新しい酵素反応)を創成する」、生命科学者の夢を実現するこの研究に期待しています。 

Project timeline

Date Plans
2025年7月 データ取得
2025年9月 国内学会で発表
2025年11月 論文執筆開始

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Featured : サイエンスカフェ

本プロジェクトに関するサイエンスカフェにご招待します!日程は2025年6月中を予定しており、対面とオンラインの2回開催予定です。研究内容を始めとしたバイオインフォマティクスと酵素について皆さんにお話したいと考えています。

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サイエンスカフェ June, 2025
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Featured : 論文謝辞にお名前掲載

今回の研究を論文として投稿する際に、謝辞を掲載いたします。2026年3月の掲載を目指します!遅れる場合もありますが、その際は活動報告にて状況を共有いたします。

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お礼のメッセージ March, 2025
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サイエンスカフェ June, 2025
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