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Takechika Hayashi

Kyoto University、1st year doctoral student

Challenge period

2024-09-03 - 2025-08-31

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1 month ago

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7 months ago

#8. AI Co-Scientistと研究者の未来

いつもサポートありがとうございます。
京都大学の林尭親です!

今日は,先日2月19日にGoogle Researchから発表された,"AI Co-Scientist"について解説してみたいと思います!
めっちゃ長くなりました。ごめんなさい。
頑張って簡単に説明するならマルチエージェント&Elo Ratingで自己学習研究者が誕生するって感じでしょうか(AI詳しい人向け)。
もっと雑に言うなら,賢いやつたくさん競わせて最高の研究計画を考えさせようぜ?って感じでしょうか。多分。

AI Co-Scientistとは何か?
AI Co-Scientistとは、Google Researchが開発した最先端のAIシステムで、科学者の「バーチャル共同研究者」として機能することを目指したものです​(まだテスト段階で,現段階での一般利用はできない模様です)。これは,従来のChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデルとは異なり,単なる文献検索や要約を行うツールではなく、新しい科学的アイデア(仮説)や研究計画を生み出し、研究のスピードを加速させることを目的としています​。

AI Co-Scientistの仕組み
科学のパートナーとしてのAI
AI Co-Scientistは、研究者が自然言語(普段使う言葉)で入力した研究上の目標や疑問に対して反応します。例えば、「○○という現象の原因は何だろう?」といった問いを与えると、このAIは関連する知識を幅広く参照しながら、斬新な仮説や研究の概略、さらには実験の手順まで提案してくれます​。これはまるで経験豊富な共同研究者とブレインストーミングしているような感覚です。特徴的なのは、その思考プロセスが科学者の研究方法に倣って設計されている点です​。

AI Co-Scientistの内部には複数の役割を持ったAIのモジュール(エージェント)が存在し(これを「マルチエージェントAIシステム」と呼んでいる),簡単に言うと漫画やアニメでみられる脳内会議のように複数の無機思考体が議論をしているような機構になっているらしいです(参考はこちら)。​具体的には、以下のような役割分担がなされています​。
- 仮説生成エージェント(Generation): 与えられた課題にもとづき、考え得る仮説(「もしかすると○○ではないか?」というアイデア)を生み出す。人間のひらめきに相当するステップ。
- 振り返り・評価エージェント: 提案された仮説を批判的に検討。矛盾はないか、既存の知見と照らしてどうかなど、専門家の視点で吟味するイメージ?。
- ランキング(評価付け)エージェント: 複数の仮説の中から有望なものを順位付け。重要度や新規性、妥当性といった観点でスコアリングし、どれがより有力かを判断。
- 進化(改良)エージェント: 仮説や計画をさらに洗練。一部を修正・改良したり、他の情報源を参照して質を高める。まさに研究を推敲していく段階。
- 近接(関連探索)エージェント: 必要に応じてインターネットのウェブ検索や専門データベースを利用し、仮説の裏付けになる情報を探す。最新の研究論文やデータにもアクセスし、提案に説得力を持たせる。
- メタレビュー(総合評価)エージェント: 最後に全体として提案された研究計画や仮説を総括的に点検。研究の目的に照らしてバランスが取れているか、新規性は十分かなどをチェック。
これらのエージェントが自動フィードバックの仕組みを通じて互いに競い合い、協力し合うことで、仮説や計画の質をどんどん高めていきます​。

このプロセスは何度も繰り返され、まさに「良いものができるまで磨き上げる」ように働きます​。例えば、仮説生成エージェントが出したアイデアを振り返りエージェントが批評し、改良エージェントが手を加える――といったサイクルが自動で行われるイメージです。こうした自己改善型のループ(self-improving cycle)により、最終的には人間の専門家から見ても興味深い斬新な仮説や研究プランが生み出されることが期待されています。

AI Co-Scientistの優れたポイント
このAIが特に力を発揮するのは、人間にとって膨大すぎる情報や幅広すぎる知識が必要とされる場面であり,いわば各分野で毎年莫大な数の論文が発表され、研究者が全ての関連文献に目を通すことは困難な現代の科学そのもであると言えます。近年は,斬新な発見の多くは複数分野にまたがる知識の統合(いわゆる学際的な研究)から生まれており、一人の研究者が異なる領域の知見まで把握するのは容易ではありません。AI Co-Scientistはこうした「広さと深さの両立」という課題に対して、あらゆる公開文献を機械的に読み込み、関連する知識を統合することでアプローチします。人間なら見落とすような遠く離れた分野の知見同士を結び付け、新たなアイデアを導いてくれる可能性があります​。

また、AIならではのスピードと計算能力も強みです。AI Co-Scientistは必要に応じて計算資源(コンピュータの処理能力)を大規模に投入し、仮説を検証したり改良したりします​。その際、自分自身の仮説に「Eloレーティング」と呼ばれる評価スコアを付けて競わせます​(Eloレーティングとはチェスなどで使われる実力評価法で、この場合AIが自分のアイデアの良さをスコア化するものです)。Googleの研究によれば、このスコアが高い仮説ほど実際に正しい答えである可能性が高いことが確認されており​、AIはこの指標を頼りにより良い仮説を選別・改良します。このメカニズムについては詳しく明かされていませんが,文章を読む限りサイクルの中で出力された複数の仮説は総当たり的に1対1で比較して,よりEloレーティングの高いものを採用するという感じかなあ…(詳しい方がいたら教えてください)。

実際,時間をかけて推論を繰り返すほど結果の質が向上し、最新の高度なAIモデルや人間の専門家をも凌ぐアウトプットに達することも報告されています​。実際、専門家による評価実験では、AI Co-Scientistの提案した研究アイデアは他の先端AIモデルのものより新規性やインパクトの面で高く評価され、専門家たちは従来モデルよりAI Co-Scientistのアウトプットを好む傾向が示されました(参考画像はこちら)​。さらに興味深いエピソードとして、AI Co-Scientistが人間の未公開の発見を“再発見”したという例も報告されています。ある研究チームが最近見つけた細菌の新しい遺伝子伝達メカニズムに関する秘密の課題をAIに与えたところ、AI Co-Scientistが独立にそのメカニズムを解明する仮説を提案したらしいです…。これは、研究者の実験で判明していた新発見(まだ論文等で公表していない内容)と一致する内容の仮説でした。つまりAIが既存の公開情報だけを頼りに、人間が苦労して辿り着いた発見に自力で到達したことになります​(wow)。

心理学分野への応用: 社会心理学での活用例
最後に簡単に心理学研究での応用例について触れたいと思います。心理学系にあんまり興味ない人は読み飛ばしていただいても構いません。
社会心理学は、人々の行動や感情が他者や社会によってどのように影響されるかを研究する分野です。この領域では、たとえば「インターネット上のソーシャルメディアが人々の意見の極端化(ポラリゼーション)に与える影響」や「異なる文化圏での集団意思決定の違い」など、非常に幅広いテーマが扱われます。研究者の一般的な研究の進め方は,先行研究の調査→新しい仮説を立てたり実験や調査をデザインする→データ収集・分析というプロセスを踏みます。しかし先行研究の量が膨大だったり、関係しそうな理論が社会学や文化人類学など他分野にもまたがったりしている場合、一人で網羅するのは困難です(こういった場合,現在はそれぞれの分野に深い見識のある研究者が共同で研究をしています)。こうした場面でAI Co-Scientistは強力な助っ人になりえます。具体的には、以下のような形で社会心理学の研究プロセスを支援できます。
文献レビューの支援: 関連する既存研究を大量に読み込み、主要な知見をまとめてくれます。例えば「SNSと世論形成」に関する数百件の論文をAIが短時間でスキャンし、重要な理論や過去の発見を要約して提示できます。研究者は見落としがちな論点や異分野の関連研究も把握しやすくなります。
新規仮説の生成: 文献の知見を踏まえつつ、まだ誰も検証していないようなユニークな仮説を提案します​。これは,結構クリティカルできちんとした先行研究と鋭利な仮説が立てられてしまえば,あとはある程度作業的なプロセスしか残っていません。研究のきっかけは研究者独自が物理的・精神的に体験したところから始まるところが多いので,自分が全く興味のない問いというのは立てにくかったですが,AIで一日に何度もこういった仮説が立ってくると,自分は興味がないけれど社会で解決すべき課題が明確に分かり,それに基づいて科研費を獲得するみたいな世界観が出てくるのかもしれません。人間の研究者だけでは思いつかなかった切り口を提示してくれる点が大きな価値であり,アイデアだしという最後の取りででさえも,スケーラビリティに負ける時代がすぐそこに迫ってきているかもしれません。

このように、社会心理学の研究者はAI Co-Scientistをブレインストーミングと計画策定のパートナーとして活用できます。例えば研究者が「近年のオンライン上のいじめ問題の新たな要因を探りたい」と思ったとします。AIにこの目的を伝えると、まず関連する心理学や教育学、さらにはネット文化に関する文献まで渉猟し、現在知られている要因(例えば匿名性の影響、集団心理の影響など)を整理してくれるでしょう。その上で、「新たな要因」となり得る仮説を提案します。もしかすると、それは「リアルの人間関係とオンライン上のアイデンティティのギャップ」がいじめを助長しているのではないか、といった独創的なものかもしれません。そしてその仮説を確かめるために「学校内の友人関係とSNS上のやり取りを追跡調査し、ギャップの大きさといじめ経験の関連を統計分析する」というような具体的な研究デザインまで示してくれるかもしれません。研究をしていると割と読んでいる人が多い安宅さんの「イシューから始めよ」という本がありますが,とにかくすべての可能性を調べてみる犬の道が正しいというような世界が誕生してしまうのでしょうか。

さいごに
長くなりましたが,今日はAI Co-Scientistについて紹介しました!
飲食業界で喩えると,ファミレスぐらい提供が早くてミシュラン星付きぐらいおいしいみたいな感じ?アパレルでいうと,ファストファッションぐらい安くてハイブランドくらい生地が良くてデザインもいけてるみたいな?ほとんどやることがなくなったような感じがしてならないですが,面白くて意味のある研究をかぎ分けるセンスみたいなもの(僕のボスはこれを研究者としての目と前から呼んでます)が必要になってくるのかもしれません。そのセンスを養うには研究をし続ける以外にはなさそうなので,来たる時まで自分を磨き続けようと思います。
エキスパートになれますように…!

ではまた!

Takechika Hayashi Wed, 26 Feb 2025 17:24:48 +0900
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