今月は、普段私たちが研究で使用している分析装置について、ご紹介したいと思います。
エッセンシャルオイルに含まれている香気成分の分析には、GCMS(Gas Chromatography Mass Spectrometry、ガスクロマトグラフィー質量分析)と呼ばれる分析手法が良く用いられます。この方法では含まれている香気成分一つ一つについて、その成分の分子量を測定しています。私たちが普段使っている精油の説明書には、リナロール(分子量154)やメントール(分子量156)など含まれている香気成分が記されていますが、この成分が本当に含まれているかを知る手段として、それぞれの香気成分の分子量を示す成分がその精油に含まれているかを調べる方法があります。
ただ、分子量だけですと成分を決められないこともあります。例えば、コーヒーやお茶に含まれる「カフェイン」と植物に含まれる代表的な成分である「フェルラ酸」は同じ分子量194なので、分子量だけではこの二つの成分を区別することができません。通常、水素の原子量は1、炭素は12、窒素は14、酸素は16と整数値を用いて分子量を求めますが、実際には炭素を12.00000とすると、水素は1.007825、窒素は14.003074、酸素は15.994915と整数値とはわずかに異なります。この精密な値を用いるとカフェインの分子量は194.080376、フェルラ酸の分子量は194.05791となり、このわずかな違いを検出できる質量分析計であれば、この二つの成分を区別することができます。
私たちの研究室では、このわずかな違いを検出できる質量分析(Time of Flight MS, TOF MS, 飛行時間型質量分析計)を用いて精油の分析を行っています。しかし、この分析装置を用いると別の問題も生じてしまい、折角、精密に測定できた精油の分析データもうまく活かすことができませんでした。しかし、この問題の解決策を分析を専門とされない方にご教授頂き、新しい活用法が見出すことができました。そのお話については、来月ご報告したいと思います。