academistスタッフからの一言
歯を持つクジラのなかで最大の種であるマッコウクジラの生態は、未だ解き明かされていないことが多数存在しています。長崎大学大学院の小林駿さんは、「オスのマッコウクジラが他の個体とどのような社会的関係を築いているのか」ということを明らかにするべく、日々フィールドワークに勤しんでいます。現在小林さんは、研究にドローンを活用することを検討中。クジラの社会的関係とドローンは、一体どのように結びつくのでしょうか。若手研究者の挑戦的な取り組みに、ぜひご注目ください。
担当者:柴藤亮介
マッコウクジラは、歯を持つクジラのなかで最大の種です。マッコウクジラのメスとコドモは低緯度の温暖な海域で、個体の変動が少ない安定的な群れを形成しています。メスは生涯母親の群れに留まるのに対して、オスは性成熟する前に母親の群れを離れ、年齢の近いオスと新しい群れをつくります。
これまでの生態調査によって、メスとコドモの群れの構造や行動に関する理解は進んできました。しかし、出自群を離れた後のオスの群れの構造や個体間関係、コミュニケーションのようすなど、オスのマッコウクジラが成長と共にどのような社会性の変化を遂げるのかということは、未だ明らかにされていません。
私たちは、クジラの体長を正確に測ることで、クジラたちの社会性の変化を調べていきたいと考えています。さまざまな体長の個体がそれぞれどのような行動をするのか、他の個体とどれくらい一緒にいるのかというデータを集めることができれば、成長段階ごとの行動の特徴がわかり、最終的には成長に伴う社会性の変化を明らかにすることができるはずです。
過去にも、洋上でクジラの体長推定を試みた研究はいくつもあり、マッコウクジラについてはカメラと距離計を用いて体長を推定する方法が一般的になっています。しかし、この方法は測定誤差が大きく、データが取れる機会も限られてしまいます。そこで私たちは、上空・水中での撮影と海面からの離着陸可能な防水ドローンを用いて上空からクジラを撮影し、体長を測定したいと考えました。
この方法であれば、既存の方法よりも測定誤差が小さく、より正確な測定が可能になると考えられます。また船上からではクジラの身体の一部しか確認することができないため、その行動を詳細に観察することは困難ですが、防水ドローンを使って上空または水中でクジラを撮影することができれば、船上からは知ることのできないクジラの行動や生態を明らかにすることができるのではないかと期待しています。
ドローンを用いた鯨類の生態研究は発展途上であり、体長推定や行動観察の手法も確立されていないため、本研究も世界に先駆けた研究となり得ますが、防水ドローン等の調査機材購入だけでも30万円以上の費用がかかり、個人の力だけで研究を遂行することは困難な状況にあります。そこで、ぜひとも皆さまからご支援を賜りたく、今回のプロジェクトを立ち上げました。
ご支援いただいた方々には、調査で撮影した数々の美しい写真や、実際に撮影したドローン映像、五島列島沖マッコウクジラ観察会など、私たちの調査研究にまつわるお礼をたくさん用意しておりますので、応援よろしくお願いいたします。
小林駿(KOBAYASHI Hayao)と申します。長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科の博士課程(5年一貫制)4年で、北海道根室海峡と長崎県五島列島沖をフィールドとしてオスのマッコウクジラの研究を行っています。母親の群れを離れた後のオスのマッコウクジラの生態は今でも不明な点が多く、特に群れの構造や個体間関係、コミュニケーションなどその社会性についてはほとんど研究が進んでいません。私はオスのマッコウクジラが他個体とどのような社会的関係を築いているのかを明らかにするため、日々調査に明け暮れています。研究の継続と進展のために皆様の御支援を宜しくお願い致します。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2017年12月 | クラウドファンディング挑戦 |
2018年3月 | 調査機材購入 |
2018年4月 | 調査開始 |
2019年9月 | 学会発表 |
注目のプロジェクト一覧
Copyright © academist, Inc. All rights Reserved.