「大曲の花火」をご存知でしょうか。明治時代から行われている歴史ある行事で、日本三大花火大会のひとつに数えられているものです。全国の花火師たちが腕によりをかけて作った花火が夜空いっぱいに打ち上げられる様子は、本当に美しくて壮観で、研究と教員業務で日々多忙を極める私には、その景色を眺める時間が1年のうちの最大の楽しみとなっています。
さて、そのような美しい花火は、職人による精密な作業を駆使した伝統工芸で作られています。このため量産化が困難で、技術継承も難しいのが現状です。また、花火容器となる玉皮は基本的に紙でできていますが、稀に打ち上げ後に燃え尽きず、大きな破片となって落下し、観客に当たって怪我を招いたり、田畑や河川に落ちて環境汚染を引き起こしたりすることがあります。
その問題を解決するために、私たちは「プラスチック射出成形による玉皮容器製作」というアイディアを提案しました。射出成形とは、高温で溶かしたプラスチックを金型に流して冷却固化させることで製品を作る手法のことです。この方法を用いれば、玉皮容器の金型を作るだけで、同じ品質のものを何度でも、しかもわずか1分程度で作れてしまいます。
さらに、これに用いる材料を「生分解性プラスチック」にすれば、破片が地表に落ちても環境負荷を小さくすることができます。私たちの身近に使われている一般的なプラスチックは、非常に安定性の高い材料であるため、地表に落ちるとそのままの状態で残ってしまいます。一方、生分解性プラスチックは、微生物が食べて二酸化炭素と水に分解してくれるため、地面に残り続けることはなく、植物が育つための光合成に利用されるのです。
ここまで言うと、生分解性プラスチックの花火であれば良いことずくめのようですが、ひとつ大きな問題が発生してしまいます。一般に、玉皮容器の周囲にはクラフト紙と呼ばれる紙をまく必要がありますが、紙とプラスチックは正に「水」と「油」の関係、接着剤を使ってもピッタリとはくっつかず、両者の間に隙間ができてしまい、爆発時にきれいに割れずに、真円の花火にならなくなってしまうのです。
私たちは、この生分解性プラスチックに「米」をブレンドする方法を思いつきました。米は水を加えて加熱すると、「糊」になります。この糊状になった米は、一般的なプラスチックによく似た性質を示すことが知られています。この糊としての性質を調整して、プラスチック化した米をブレンドすれば、米は当然、水と相性が良いので、クラフト紙との接着性が良好になると考えられます。
ただし、生分解性プラスチックと米だけを混ぜてひとつの材料にしたとしても、実際はプラスチックの相と米の相で大きく分離してしまいます。爆発による破壊は、そのような異なる相同士の界面から起きてしまうため、分離している相が大きいと破片も大きくなってしまいます。
下の図は、米と生分解性プラスチックだけでブレンドした材料の断面を電子顕微鏡で観察した写真です。粒状のものが米の凝集体で、それ以外の部分が生分解性プラスチック部分となります。肉眼ではひとつの材料に見えても、図のように実際は異相分離していることになります。この分離している相の大きさをコントロールすることができれば、破片が小さくなり、人に当たっても危険が少なく、田畑や河川に落ちても環境負荷を小さくできるようになるわけです。
そこで私たちは、両者の関係のちょうど中間くらいの相性を示す「稲わら」などを混ぜることで、細かい相分離ができるようになり、破片も小さくなるのではないかと考えました。稲わらやもみ殻は硬いため、たくさんの量を混ぜるとでき上がるブレンド材も硬くなりますが、その一方で爆発のような衝撃には弱くなり、粉々になりやすくなるはずです。
今回の研究では、開発するブレンド材が必要な物性値を満たせるように、生分解性プラスチック、米、稲わら/もみ殻から成る3種類の構成材料の組成をコントロールし、各々でブレンド材がどのような性質を示すのかを調べたいと考えているのですが、資金が足りていない状況です。
研究に使う試薬や消耗品の一部、研究成果発表・情報収集に係る旅費は、大学からの研究費などで賄うことができますが、この研究にしか使わない材料の購入に充てることはできません。また、できあがった花火を打ち上げるには、県内の花火業者の協力が必要となるため、どうしても大きな金額が必要となってしまいます。
アカデミストで集めた資金は、資材購入費と花火打ち上げ費などに用いる予定です。この花火は、打ち上げ時の「一瞬の美」だけでなく、自然環境との調和という「持続的な美」でも魅せられる新しいものとなるでしょう。これまでにない美しい花火の実現のために、私たちの取り組みへのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
時期 | 計画 |
---|---|
2017年2月 | クラウドファンディング挑戦 |
2017年4月 | 実験開始 |
2017年10-11月 | 花火玉皮の試作・打ち上げ |
2018年3月 | 成果のまとめ |
みなさんにご支援いただいた研究費で進めた研究について、レポートにまとめて2017年6月中にお届けいたします。花火のオリジナル画像付きです。私たちの日ごろの研究活動に、ぜひご注目ください!
研究報告レポート(電子版) / 花火オリジナル画像
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
今回のクラウドファンディングで進めた研究の成果は、学会で発表予定です。その学会で利用した資料をメールにてお送りいたします。(一部、修正を加える場合もありますので、ご了承ください。)
学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私が以前撮影した「大曲の花火」の写真をプリントしたTシャツ(黒)をお届けします。サイズはS, M, L, LLの4種類からお選びください。
オリジナル花火Tシャツ / 学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
5人のサポーターが支援しています (限定 30 個)
今回の研究成果について報告するサイエンスカフェにご招待いたします。時期は2017年6月のどこかの土曜日を、場所は秋田県立大学を予定しています。(お越しいただくことが難しい皆さまには、当日利用した資料をお送りします。)
サイエンスカフェ参加権 / 学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究が論文になった暁には、皆さまのお名前を謝辞欄に記載いたします。時期は未定ですが、末長く私たちの研究を応援していただけるとありがたいです。
論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私たちが実際に作成した花火の模型(実寸大)をお送りします。生分解性プラスチック、もみ殼、コメで作ったオリジナルの模型です。5個限定になりますので、ご興味のある方はお早めにお申し込みください!(注:中身に火薬は入っておりません。)
オリジナル花火玉模型 / サイエンスカフェ参加権 / 学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
1人のサポーターが支援しています (限定 5 個)
限定3名様を対象に、実際に打ち上げる花火にお名前を掲載します。打ち上げが決定した場合には、支援者の方々のお名前を掲載し、写真をお送りいたします。(都合により打ち上がらない場合もございますので、ご了承くださいませ。その際には別途リターンを作成し、お送りいたします。)
花火にお名前掲載権 / 花火のオリジナル模型 / 論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / オリジナル花火Tシャツ / 学会講演資料 / 花火オリジナル画像 / 研究報告レポート(電子版)
0人のサポーターが支援しています (限定 3 個)
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研究報告レポート(電子版)
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
学会講演資料 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
限定!オリジナル花火Tシャツ 他
5
人
が支援しています。
(限定 30 個)
サイエンスカフェ参加権 他
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)
論文謝辞にお名前掲載 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)
限定!オリジナル花火玉模型 他
1
人
が支援しています。
(限定 5 個)
あなたの名前が刻まれた花火が夏の夜空に? 花火にお名前掲載権 他
0
人
が支援しています。
(限定 3 個)